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下垂体腺腫の原因・症状・治療|甲状腺の病気について

下垂体腺腫の原因・症状・治療|甲状腺の病気について

 下垂体腺腫には、機能性甲状腺腺腫(プランマー病)同様に、ホルモン産生型とホルモン非産生型に分けられます。問題となるのは前者のタイプで下垂体からは様々なホルモンが分泌されているため、あらゆる影響が全身に現れます。下垂体からは甲状腺刺激ホルモン(TSH)が含まれるため、その影響により甲状腺ホルモンが産生過剰となり甲状腺機能亢進症を引き起こします。

尚、下垂体からは以下のようなホルモンも分泌されているため、それらの対象となる器官においても同様に影響が出てきます。(以下の表は下垂体前葉から分泌されるホルモンです。)

ホルモンの名称 ホルモンの働き 
成長ホルモン(GH) 体の成長や、体が脂肪や糖を活用するのを制御します。
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH) 副腎を刺激して、体が脂肪や糖やタンパクを活用するのを制御します。さらに、ストレスに打ち勝つ働きがあります。
プロラクチン(PRL) 出産後に乳中を分泌させます。
甲状腺刺激ホルモン(TSH) 甲状腺を刺激して、心拍や体温などを制御します。
卵胞刺激ホルモン(FSH)
黄体化ホルモン(LH)
月経や精子の形成を制御します。
 また、下垂体は前葉、中葉、後葉に分けることができ、前葉は以上にあげた通りですが、中葉からはメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)、後葉からはオキシトシン(OXT)、バソプレッシン(VP)あるいは抗利尿ホルモン(ADH)が分泌されています。


下垂体腺腫の症状

 下垂体腺腫による症状には、大きく分けて2つあります。一つはホルモンが過剰に分泌されることによるホルモン異常症候群、もう一つは腫瘍が大きくなることによる局所の圧迫症状です。

1、ホルモン産生型腺腫

①プロラクチン産生腺腫

 下垂体腺腫の約4割を占め、女性に圧倒的に多くみられる腫瘍です。女性では無月経と乳汁分泌がみられます。男性の場合は、性欲低下やインポテンツがみられます。大きくなると視野障害が出現することもあります。女性のほうが早期に発見されやすく、1cm以下の小さな腫瘍のことも多く、女性不妊症の原因のひとつとされています。

②成長ホルモン産生腫瘍

 腺腫の約2割を占め、男性にやや多くみられます。思春期に発症した場合は巨人症になりますが、これは比較的まれで、多くは成人に発症し手足の先端、額、あご、唇、舌などが肥大してきて末端肥大症となります。成長ホルモンの異常分泌が長期間続くと、糖尿病とそれに伴う高血圧などの血管病変を合併しやすくなります。

③副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫

 全下垂体腫瘍の数%とまれな腫瘍で、若年から中年の女性に多く、クッシング病とも呼ばれています。90%以上に肥満がみられ、特に顔は満月様に丸くなり、手足に比べて胸・腹が太る中心性肥満が特徴です。ニキビが出やすく、体毛が濃くなり、下腹部に青紫色のすじがみられます。また、高い割合で高血圧や糖尿病を合併し、精神症状が出ることもあります。


2、圧迫による症状

①下垂体ホルモン産生障害(汎下垂体機能不全)

 女性では無月経ないし不規則月経、男性ではインポテンツや性欲低下、体毛も薄くなります。また、易労性もありスタミナ不足となります。さらに、強い肉体的ショックが生じた際にショック状態からなかなか回復できないこともあります。また、抗利尿ホルモンが不足すると、薄い尿が多量に出る症状(尿崩症)がおきます。

②視力・視野の障害

 腫瘍が上方に拡大してきますと、直上にある視神経交叉部を圧迫しはじめます。まず、両目の上外側から見えにくくなってきます。さらに進行すると両目の外側半分が見えなくなってきて、両耳側半盲と呼ばれる典型的な症状となります。

③頭痛

頭痛もしばしば認められます。


下垂体腺腫の検査(診断)

1、画像診断

①MRI

磁気共鳴法という強力な磁場を用いた検査で、頭蓋骨の影響がなく脳あるいは腫瘍のみを映し出すことができ、また自由な断層面の画像も得られます。脳や下垂体周辺の構造が細部にわたり観察でき、腫瘍の正確な大きさや広がりを知ることができます。また、重要な血管の走行も描出することができるため、現在最も有用な画像診断法といえます。

②CT

X線とコンピューターを用いた断層撮影で、最も一般的な診断法です。造影剤の併用により、小さな腺腫の診断も可能となる場合も多く、また腺腫周囲の骨の状態を調べることができる点などの優れた特性をもっています。

③頭部のレントゲン検査

トルコ鞍の変形・破壊などの骨変化を調べます。

④脳血管撮影

下垂体のすぐ両側には脳に栄養を送る重要な内頸動脈が走行しており、この動脈の走行異常や奇形がないかどうかを術前に調べておくことが大切です。大腿部の動脈から細い管を脳の血管に進めて行われます。


2、ホルモン検査

 ホルモン検査には、腺腫によって過剰に分泌されたホルモンを調べる意味と、逆に分泌が低下した状態のホルモンを調べる意味とがあり、主に静脈からの採血で行います。

ホルモン産生腺腫の場合は、そのホルモン(プロラクチン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンなど)の血中濃度が異常高値を示し、直接診断につながります。さまざまな刺激テストや抑制テストを行い、その分泌動態を調べることがあります。

一方、分泌の低下しているホルモンに対しては、そのホルモンの分泌刺激テストを行います。ふつう各分泌刺激ホルモン製剤を注射した後、15~30分ごとに連続採血して目的のホルモンの血中濃度の変化を調べます。

ホルモンの名称 ホルモンの働き 
成長ホルモン(GH) 体の成長や、体が脂肪や糖を活用するのを制御します。
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH) 副腎を刺激して、体が脂肪や糖やタンパクを活用するのを制御します。さらに、ストレスに打ち勝つ働きがあります。
プロラクチン(PRL) 出産後に乳中を分泌させます。
甲状腺刺激ホルモン(TSH) 甲状腺を刺激して、心拍や体温などを制御します。
卵胞刺激ホルモン(FSH)
黄体化ホルモン(LH)
月経や精子の形成を制御します。


3、眼科の検査

視力、視野、眼底の精密検査を行います。


下垂体腺腫の治療

下垂体腺腫の治療には、外科療法、放射線療法、および化学療法の3通りの治療法があります。

1、外科療法

 経鼻的手術と開頭手術の2つの方法があります。腺腫の進展具合などのさまざまな条件で選択されます。術後、多くのケースでホルモン補充療法が必要になります。

①経鼻的手術

 上の前歯のつけ根の口腔粘膜を切開し、鼻腔の裏側の副鼻腔を経て脳下垂体の直下に到達します。薄い骨と硬い膜を切開し、正常の脳下垂体を残しながら下垂体腺腫を除去します。

②開頭手術

 額の髪の生え際の皮膚を切開して骨に窓を開け、脳をおおっている硬膜を切開し、脳を特殊なへらで持ち上げて下垂体部に到達します。周囲にある視神経や内頸動脈などの正常組織の間から腫瘍を摘出します。


2、放射線療法

 通常、手術などと併用して、手術後に残存した腫瘍に対して補助療法として用いられています。週に5日間連続で、4~5回繰り返します(4~5週間)。外来通院しながら治療することも可能です。現在では、ごく狭い範囲で腫瘍の部分を集中的に短期間で照射する方法も確立されています。

 副作用はほとんどありませんが、耳の前の部分の頭髪がぬけ、再び生えてくる場合と生えてこない場合とがあります。治療後、多くのケースでホルモン補充療法が必要になります。


3、化学療法

 下垂体にできた腺腫が異常に分泌しているホルモンの産生を抑制する治療が主体となります。ホルモン産生型の腺腫に対しての化学療法には、著効を示すもの、あまり有効でないものもあります。現在、最も確実な治療効果を得られるものとしては、プロラクチン産生腺腫に対して使用されているブロモクリプチン(商品名:パーロデル)があります。この薬は、プロラクチン産生腫瘍の大半と成長ホルモン産生腫瘍の1/3に効果が認められ、血中のホルモン値が減少するばかりでなく、特にプロラクチン産生腺腫では腫瘍の縮小効果も期待されます。したがって、これらの腫瘍では腫瘍が小さい場合や残存腫瘍がある場合に、放射線療法を行わずにブロモクリプチン療法が行われています。ブロモクリプチンの服用には重篤な副作用はありませんが、服用開始時に吐き気や立ちくらみ、便秘などの症状がみられることがあります。


4、ホルモン補充療法

不可欠なホルモンについては、欠乏の程度によっては補充療法が必要です。副腎皮質ホルモンと甲状腺ホルモンは内服薬で補います。抗利尿ホルモンは鼻に吹きつける薬があります。成長ホルモンと性腺刺激ホルモンについては状況に応じて補充します。


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